胸部X線

胸部エックス線の検査をします。

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検査の内容
胸部に背後からX線を照射します。
検査当日の注意
X線は放射線の一種ですが、一回の被曝量はきわめて低く(約0.06mSv)、極端な回数を重ねない限り人体への悪影響とは考えられません。
ただし妊娠中、または妊娠の可能性がある人は、胎児への影響が心配されますので申し出てください。
検査でわかること
肺炎、肺結核、肺がん、肺気腫、胸水、気胸など、呼吸器の疾患の有無、その程度がわかります。
以下のような所見が見られます。(アイウ順)
■所見
異物 胸部の異物は、胸腔内に本来ない物質、たとえば誤嚥による入れ歯などの金属や、外科手術による骨の接合のための金属設置物など種々のものが胸腔内に入った状態です。胸郭外の異物としては、鍼灸針、ネックレス、ブラジャー留め具、帯磁金属皮膚貼付物などが胸部写真上異物として認められることもあります。
医療機器装置 治療、検査目的などで胸部に様々な装置(たとえばペースメーカーなど)が体内に埋め込まれます。これら人工装置をいいます。
右胸心
(うきょうしん)
本来は胸部の左側にある心臓が右側にあります。生まれつきの異常によるものです。
右側大動脈弓
(うそくだいどうみゃくきゅう)
大動脈弓が、正常な場合とは逆に右後方に向かい、脊椎の右側を下降しています。生まれつきの異常によるものです。
横隔膜の挙上
(おうかくまくのきょじょう)
横隔膜が上にあがっている状態です。横隔膜神経の麻痺、横隔膜弛緩症、肝腫大、横隔膜ヘルニアなどでみられます。
横隔膜の腫瘤影
(おうかくまくのしゅりゅうえい)
横隔膜の腫瘍には、転移性横隔膜腫瘍や横隔膜肉腫などがありますが、きわめて稀です。
横隔膜ヘルニア
(おうかくまく)
横隔膜に、生まれつき(先天性)あるいはなんらかの原因(後天性)によって、裂孔(れっこう)(あな)ができ、その孔(あな)を通って腹腔(ふくくう)内の臓器が胸腔(きょうくう)や縦隔(じゅうかく)に逸脱した状態をいいます。
気管狭窄
(きかんきょうさく)
気管が狭くなった状態です。肺気腫などで肺が過膨張になると気管が左右から圧迫されて、気管の透亮像が狭まって見えるようになります。稀に腫瘍によることがあります。
気管支拡張像
(きかんしかくちょうぞう)
気管支拡張症に認め、主に中層部の気管支が拡張した状態です。一昔前には円柱状気管支拡張像や嚢胞状気管支拡張像を気管支造影検査で確定診断していましたが、現在は高解像度CT検査によって低侵襲で診断できます。気管支拡張症そのものは激減しており稀な所見になっています。
気管支壁の肥厚像
(きかんしへきのひこうぞう)
慢性気管支炎や気管支拡張症など慢性の炎症によって気管支壁が厚くなり、肺の中層部において2本の平行した線に見える所見です。
気管偏位
(きかんへんい)
気管の位置が外部組織からの影響により、左右いずれかに偏位した状態です。広範な無気肺(上掲)の場合には無気肺化した側に気管が引き寄せられ、縦隔腫瘍などの場合には反対側に押し出されます。
気胸
(ききょう)
肺胞という袋状の組織が融合した大きな袋が破れる病気です。ブラという空気の袋の破裂などが原因で起こります。その結果、肺から空気が抜けて萎んだ状態(肺虚脱)となり、胸部エックス線検査では虚脱した肺と胸腔内に空気の溜まりとして認められます。胸腔内圧が上昇する緊張性気胸では、縦隔部が圧排されて反対側に偏位し横隔膜が押し下げられます。
奇静脈葉
(きじょうみゃくよう)
奇静脈が発生途中で肺を横切ったために、右肺の上部が2つに分かれている状態です。生まれつきの異常によるものです。
胸郭変形
(きょうかくへんけい)
胸郭変形とは、鳩胸や漏斗胸などのように、胸郭が出っ張ったり凹んだりと変形してしまうことです。
胸郭形成(成形)術後
(きょうかくけいせい(せいけい)じゅつご)
肺結核などの治療法で、肋骨などを切除し胸膜外より肺の結核病巣を圧迫して縮小させる外科手術の治療を胸郭形成術といいます。その治療の後で胸郭の変形が見られます。現在はあまり行われていない古典的治療法ですが、膿胸の外科的治療では現在も行われています。
胸骨縦切開術後
(きょうこつじゅうせっかいじゅつご)
胸部の外科手術の一つで、胸骨を身体に対し縦方向に切開して左右に分割し開胸する手術法で心臓手術や胸腺腫などの縦隔腫瘍などの手術を胸骨縦切開術といいます。その手術の後で胸骨に手術後再接合のための金属線で止めた痕などが見られます。
胸水
(きょうすい)
胸部に通常存在しない水がたまった状態です。心不全、腎不全、胸膜炎などの場合に見られます。
胸膜の腫瘤影
(きょうまくのしゅりゅうえい)
胸膜は肺を包む2枚の薄い膜で、胸膜にできた腫瘍です。肺がんなどからの転移性胸膜腫瘍が大部分を占めます。胸膜そのものから発生する腫瘍は胸膜腫瘍とよびます。良性のものは限局型中皮腫とよばれ命に関わることはまずありません。一方、悪性のものは、悪性中皮腫と呼ばれます。
胸膜の石灰化影
(きょうまくのせっかいかえい)
肺を包む胸膜にカルシウムが沈着するものです。肺結核、塵肺症(じんぱいしょう)などの場合に見られます。
胸膜肥厚
(きょうまくひこう)
肺を包む胸膜が厚くなった状態です。過去の胸膜炎、肺感染症などが考えられます。
胸膜プラーク
(きょうまく)
胸膜プラークとは、アスベストの吸入により胸膜に生じる両側性の不規則な白板状の肥厚です。プラークの形成は、アスベスト吸入から15~30年かかると言われており、自覚症状はなく、呼吸機能障害も通常は見られません。胸部X線検査では、肺野に結節状、線状、索状影などの所見が認められます。
胸膜癒着
(きょうまくゆちゃく)
胸を包む胸膜に炎症が起こり周囲に癒着した跡です。過去の胸膜炎、肺感染症などが考えられます。
空洞影
(くうどうえい)
病変の内部が液化して排出された後に空気が入って形成されたドーナツ型の陰影で、肺結核、真菌感染、肺膿瘍、肺がんなどに見られます。
血管影の走行異常
(けっかんえいのそうこういじょう)
肺の中に分布している肺動脈や肺静脈の一部に位置や太さの異常を認める場合です。シミター症候群(scimitar syndrome)などに見られます。 シミター症候群は、右肺静脈が左心房ではなく横隔膜を貫いて下大静脈に還流する生まれつきの異常です。シミターは三日月刀の意味で、X線画像上、異常肺静脈が三日月刀のように見えることに由来しています。
結節影
(けっせつえい)
胸部エックス線画像に映った直径3 cm以下の類円形の陰影をいいます。原発性肺がんや、大腸がん、腎がんなど他の部位からの転移、結核、肺真菌症(カビで起こる病気)、非結核性抗酸菌症、陳旧化した肺炎、良性腫瘍(過誤腫など)などに見られます。
索状影
(さくじょうえい)
太さが2~3mmのやや太い陰影を索状影といいます。肺感染症が治った痕跡などとして現れます。
鎖骨骨折・骨折後
(さこつこっせつ・こっせつご)
スポーツによる骨折の中で、 比較的多く遭遇する骨折に「鎖骨骨折」があります。 これはラグビーや、アメフトなどのコンタクトスポーツや、 転倒などによっておこる場合が多い骨折です。
鎖骨の異常影
(さこつのいじょうえい)
鎖骨の異常影には、骨折や奇形、変形などがあり、まれに腫瘍が見つかることがあります。
シャントチューブ 水頭症などの治療では脳室と腹腔をつないで脳脊髄液を脳室から腹腔内へ排出する管を手術的に体内に埋め込みます。この管をシャントチューブといいます。
縦隔拡大
(じゅうかくかくだい)
縦隔(上掲)の幅が広くなっている所見です。大動脈瘤、腕頭動脈延長、縦隔腫瘍などに見られます。
縦隔気腫
(じゅうかくきしゅ)
左右の肺の間の縦隔に空気が侵入しているものです。外傷による肺損傷、激しく吐いたあと、食道に小さな穴が開いたりした場合に起こります。胸部X線検査では、縦隔内に透亮像(空気の溜まり)として認められます。
縦隔の腫瘤影
(じゅうかくのしゅうりゅうえい)
胸郭内で左右の肺、胸骨、椎骨に囲まれた部分を縦隔と呼び、中に気管や大動脈、心臓、大静脈、肺動静脈などが存在し中心陰影を形成します。縦隔から生じて中心陰影に接して現れた腫瘤影(上掲)をいいます。
縦隔の石灰化影
(じゅうかくのせっかいかえい)
左右の肺の間にある縦隔のリンパ節にカルシウムが沈着したものです。陳旧性肺結核などが考えられます。
縦隔リンパ節腫大
(じゅうかくりんぱせつひだい)
左右の肺の間にあるリンパ節が腫れていることを示します。悪性リンパ腫やサルコイドーシスなどで起こります。特にサルコイドーシスでは、腫大した肺門リンパ節がクリクリとした丸味を帯びた形状を呈することが知られています。
術後変化 胸部の外科手術の後の変化で、胸郭、肺などに変形や金属物による縫合、接合のあとが見られます。
腫瘤影
(しゅりゅうえい)
直径3 cmを超える類円形の陰影をいいます。肺膿瘍、肺腫瘍などに見られます。
食道裂孔ヘルニア
(しょくどうれっこう)
本来腹部にある胃の一部が横隔膜の食道裂孔という穴を通って胸部内に入り込んだ状態です。胸焼け、胸部圧迫感などが現れます。
シルエット・サイン 同じX線透過度のものが境界を接して存在するようになったときに、その境界線が見えなくなる所見をいいます。中肺葉に起きた肺炎などで見られます。
心陰影の拡大
(しんいんえい)
心臓の陰影の横幅が胸の横幅の50%よりも大きくなっています。肥満、心不全、心臓弁膜症などの場合に見られます。
人工気胸術後
(じんこうききょうじゅつご)
結核の治療法の一つで、胸膜腔に空気を注入し、人工的に肺を萎縮させる治療を人工気胸術といいます。その治療の後で肺の変形や胸膜の肥厚などの変化が見られます。
浸潤影
(しんじゅんえい)
肺胞内への細胞成分や液体成分が入り込んで生じる境界の不明確な陰影をいいます。肺炎、肺結核など肺感染症に見られます。
ステント留置
(りゅうち)
気管・気管支や食道、血管などの狭窄解除などの治療目的で、金属などで作製した拡張装置を病変部に留置します。気管支ステント留置、冠動脈ステント留置、食道ステント留置などがあります。
脊椎圧迫骨折
(せきちゅうあっぱくこっせつ)
「脊椎圧迫骨折」とは、脊椎(せぼね)が、押しつぶされるように変形してしまう骨折です。 最近は骨粗しょう症性椎体骨折とも言われます。脊椎圧迫骨折の主な原因は「骨粗しょう症」です。脊椎圧迫骨折は、寝返りをうつ時や、起き上がる時、体動時等に痛みが出ることが特徴です。圧迫骨折を有する患者さんの多くは無症状です。
脊椎後弯
(せきちゅうこうわん)
背骨が、後に弯曲していることを言います。
脊椎側弯
(せきちゅうそくわん)
背骨が、左右どちらかに弯曲していることを言います。
石灰化影
(せっかいかえい)
肺結核などが治ったあとに石灰分が沈着して白く映る陰影です。肺過誤腫などにも石灰化影を見ることがあります。
線状影
(せんじょうえい)
太さが1~2mmの細い線状の陰影をいいます。葉間胸膜の肥厚や、心不全でのリンパ管の拡張などで現れます。
造影剤残留
(ぞうえいざいざんりゅう)
胃造影法などで、誤嚥し気管支に流れ込んで、そのまま停留した造影剤が胸部エックス線写真上気管支の鋳型状に見られたり、時間が経過するとバリウムが移動して、残留像が肺胞領域に斑点状に見られるようになります。脊髄造影などに使用した造影剤が脊髄に沿って見られる状態を指します。
大動脈弓の突出
(だいどうみゃくきゅうのとっしゅつ)
大動脈の上部はループを描いて走行していますが、そのループが大きく拡大しています。動脈硬化などの場合に見られます。
大動脈の拡張像
(だいどうみゃくのかくちょうぞう)
大動脈の径が拡大しています。大動脈弁閉鎖不全、大動脈瘤などの場合に見られます。
大動脈の石灰化影
(だいどうみゃくのせっかいかえい)
大動脈にカルシウムが沈着しています。動脈硬化などの場合に見られます。
大動脈の蛇行
(だいどうみゃくのだこう)
大動脈が弯曲して走行しています。動脈硬化などの場合に見られます。
多発性結節影
(たはつせいけっせつえい)
結節影(上掲)が肺野に複数認められた場合をいいます。他の臓器からの悪性腫瘍の転移や肺真菌症、非結核性抗酸菌症などに見られます。
多発輪状影
(たはつりんじょうえい)
間質性肺炎などにより肺の線維化が進んで肺が硬くなって肺胞が虚脱し、その中に取り込まれている細気管支が拡張して大きさ数 mm以上の輪状の陰影が繋がって見えるようになった状態をいいます。大きさの揃ったものは蜂の巣状に見えて、蜂巣肺 (honeycomb lung) と呼ばれます。
内臓逆位
(ないぞうぎゃくい)
内臓がすべて左右逆に配置されている状態です。胸部でいえば肺や心臓、大動脈が本来ある位置と逆になっている状態です。生まれつきの異常によるものです。
乳房術後
(にゅうぼうじゅつご)
乳がんなどで乳房の一部、または全部の切除を行います。その外科手術の後で乳房の変形や、乳房を切除したため胸部エックス線写真上、左右の濃度差や形状の差異が見られます。
嚢胞影
(のうほうえい)
肺胞の壁の破壊や拡張によって、隣接する肺胞と融合した大きな袋になったもので、一般には直径1 cm以上のものをいいます。これが破れると自然気胸という病気が起こります。
肺血管影の減少
(はいけっかんえいのげんしょう)
肺に肺気腫が生じて肺が過膨張に陥ったり、肺血管に血栓が詰まって肺の血流が減少したときに見られます。肺がんなどで肺葉を切除したあとの残存肺や無気肺に陥った肺葉の隣接肺が代償性に膨張したときにも見られます。
肺切除術後
(はいせつじょじゅつご)
肺癌などの外科的治療法で、病変部位を含めて肺の一部または片肺全部を切り取る治療を肺切除術といいますが、その治療の後で胸郭、肺、気管支の変形が見られます。
肺動脈拡張
(はいどうみゃくかくちょう)
肺動脈が太くなって映った所見です。心房中隔欠損症のよう肺全体の血流量が増える容量負荷型疾患では肺の動静脈が末梢部まで太さを増します。原発性肺高血圧症のような圧負荷型疾患では肺門部(上掲)の肺動脈が拡張します。
肺の過膨張
(はいのかぼうちょう)
肺気腫のように、肺の閉塞性換気障害で吸気(吸い込んだ息)が速やかに呼出できないと肺の中に徐々に空気が溜まって肺が全体に膨らんで容積が増え、過膨張になります。限局性の肺過膨張は、気管支腫瘍などによって一部の肺葉の気管支が不完全に塞がれたときに生じます。
肺紋理増強
(はいもんりぞうきょう)
肺血管は中心部から末梢部に向けて樹枝状に分岐して行き、エックス線画像上に前後の構造が重なり合って映ります。複雑な網目状陰影となり、これを肺紋理といいます。心不全などで肺血管が太くなったり、肺血管周囲に浮腫状変化が生じたり、気管支周囲に炎症が起きたりすると目立つようになり、肺紋理増強と呼ばれます。
肺門リンパ節腫大
(はいもんりんぱせつしゅだい)
胸部の中心にある心臓から左右の肺に入る太い肺動静脈や気管支が心臓近くで肺門部を形成します。ここには多数のリンパ節が存在し、肺腫瘍、肺結核、サルコイドーシスなどでリンパ節が腫大した所見を示します。
瘢痕像
(はんこんぞう)
肺感染症が治ったあとに残った小さな痕跡の陰影です。
斑状影
(はんじょうえい)
辺縁が少しぼけた斑点状の陰影をいいます。肺感染症に起因することが多く、肺結核や肺炎の初期、非結核性抗酸菌症、肺真菌症などに見られます。
変形性脊椎症
(へんけいせいせきちゅうしょう)
変形性脊椎症はおもに加齢の変化によって起こるもので、背骨の老化現象の一種です。しかし、これらは加齢していくと誰にでもみられることで、ほとんどの人が無症状です。腰痛を訴える人で、X線など検査の結果、下肢の痛みやしびれがない場合に「変形性脊椎症」という病名がつけられます。
無気肺
(むきはい)
気管支が肺腫瘍や炎症、異物などにより閉塞し、空気の出入りがなくなったために肺胞から肺胞気が抜けて部分的に肺が縮んだ状態です(閉塞性無気肺)。有効な化学療法のなかった時代に罹って治った肺結核には、広範に肺が線維化を起こして縮んでいることがあります(瘢痕性無気肺)。
網状影
(もうじょうえい)
肺の奥深くでガス交換を行う肺胞の支持組織を肺間質と呼びますが、そこへ細胞や浸出液が入り込むと、肺間質や周りの小葉間結合織が肥厚します。すると直径数mm前後の網の目状に見える陰影が広範囲に拡がって見えるようになります。肺線維症(間質性肺炎)、サルコイドーシスなどに見られます。
粒状影
(りゅうじょうえい)
直径数mm以下の顆粒状の陰影で、び漫性に広い範囲に見られる事の多い陰影です。粟粒結核、肺真菌症、びまん性汎細気管支炎などに見られます。
リンパ節の石灰化影
(りんぱせつのせっかいかえい)
リンパ節に生じた炎症の後でカルシウムが沈着したものです。陳旧性肺結核などが考えられます。
漏斗胸
(ろうときょう)
胸の前面中央にある胸骨が内側に陥凹していることを言います。
肋骨骨折・骨折後
(ろっこつこっせつ・こっせつご)
肋骨骨折は、胸部外傷のなかで最も多くみられる損傷形態です。転倒や打撲により発生しますが、体をひねったりくしゃみや激しい咳などで起きることもあります。骨折後の所見として、骨折線が認められたり骨の破断や離解が見られます。また骨折後の変化として骨硬化像がよく見られます。
肋骨島
(ろっこつとう)
骨島は海綿状骨の骨内に限局した内骨腫で、限局性の骨硬化像として確認されます。病的意義はありません。
肋骨の奇形・変形
(ろっこつのきけいへんけい)
肋骨の形態異常や変形を指しますが、おそらく病気というよりは生まれつきの個人差によるものととらえて良いと思います。代表的なものとして、頸椎から肋骨が発生する頚肋や肋骨の癒合などがあります。
肋骨の骨硬化像
(ろっこつのこつこうかぞう)
肋骨内にカルシウムが沈着するものです。骨折後によく見られる所見です。
肋骨の腫瘤影
(ろっこつのしゅうりゅうえい)
肋骨の腫瘤を形成するものとして、骨折後の変化(骨皮質の膨隆)や肋骨腫瘍(転移性、悪性、良性)などがあります。
肋骨の破壊像
(ろっこつのはかいぞう)
肋骨の破壊像は、がんの肋骨転移や肋骨の悪性腫瘍などに見られます。
■病名
横隔膜弛緩症
(おうかくまくしかんしょう)
横隔膜に原因があり、一側高位を呈します。腸管などが内容物で胸部単純X線像では特徴的なガス像で診断できますが、横隔膜ヘルニアとの鑑別が問題です。
横隔膜腫瘍
(おうかくまくしゅよう)
原発性の悪性腫瘍は稀です。良性では脂肪腫があり、エックス線CT検査での脂肪濃度が典型的です。
間質性肺炎 ・肺線維症
(かんしつせいはいえん・はいせんいしょう)
間質性肺炎は特発性びまん性と、原因のある2次性に分けられます。治療法の選択には肺生検による病理的な診断が重要です。その中で肺線維症は広範囲に進行したもので臨床的には不可逆性です。不整形陰影、網状影、多発輪状影、蜂巣、蜂窩肺が見られます。
気管支拡張症
(きかんしかくちょうしょう)
原因は先天性、感染症(結核含む)、異物による気管支閉塞などがあります。気管支拡張像を認めます。生まれつきのカルタゲナー症候群は先天性気管支拡張症、内臓逆位、慢性副鼻腔炎を有します。
気胸
(ききょう)
肺胞という袋状の組織が融合した大きな袋が破れる病気です。ブラという空気の袋の破裂などが原因で起こります。その結果、肺から空気が抜けて萎んだ状態(肺虚脱)となります。胸壁の外傷によって生じることもあります。肺の受傷部から入った空気がチェックバルブ・メカニズムで胸腔内に蓄積するようになると、本来陰圧であるべき胸腔内圧が陽圧に転じて緊張性気胸を生じます。
胸壁腫瘍
(きょうへきしゅよう)
胸郭に発生する腫瘤。軟部組織の腫瘤も認められる場合もあります。良性では脂肪腫、悪性では横紋筋肉腫などが認められます。
胸膜炎
(きょうまくえん)
胸膜は壁側胸膜と臓側胸膜がありますが、正常では右上中肺葉の葉間胸膜(毛髪線)しか認められません。原因は多様ですが、肺内に生じた炎症・悪性腫瘍などが胸膜に浸潤したものです。胸膜の肥厚あるいは胸水、貯留の発生を伴う場合があります。
胸膜腫瘍
(きょうまくしゅよう)
胸膜由来の悪性腫瘍の代表例は悪性中皮腫です。良性腫瘍として比較的多いのは脂肪腫です。その他、神経鞘腫や神経線維種があります。肺癌の胸膜浸潤やPancoast腫瘍もあります。
胸膜中皮腫
(きょうまくちゅうひしゅ)
アスベスト(石綿粉塵)曝露により生じる悪性腫瘍です。
サルコイドーシス 原因不明で比較的若い人で肺門リンパ節腫脹を先行して発症します。典型例は両側性の腫大所見です。稀に多発性粒状影、網状影を認めます。自然消褪も見られますが、中年女性発症の肺野型では遷延する事が多いとされています。
縦隔気腫
(じゅうかくきしゅ)
左右の肺の間の縦隔に空気が侵入しているものです。外傷による肺損傷、激しく吐いたあと、食道に小さな穴が開いたりした場合に起こります。
縦隔腫瘍
(じゅうかくしゅよう)
縦隔内に発生した腫瘤です。胸部X線写真正面像のみならず側面像が役立ちます。X線CTやMRIや超音波検査が質的診断に有効です。典型的代表例は前縦隔には胸腺種、奇形種、胸腔内甲状腺腫など。中縦隔には気管支嚢胞、リンパ節腫大(29)、食道裂孔ヘルニア(32)などがあります。後縦隔には神経線維種。動脈瘤などがあります。
塵肺症(石綿肺、珪肺等)
(じんはいしょう(せきめんはい、けいはい))
塵肺症は経気道的に塵を吸入して発生します。職業的な粉塵曝露(ばくろ)の代表例は珪肺と石綿肺です。石綿曝露では胸膜プラーク、肺線維症、石綿肺、肺癌、中皮腫が生じます。初期例では診断は難しく、高分解能薄層CTを用いるとわずかに胸膜下に点状影・曲線様陰影が認められます。進行した石綿肺では両下肺野中心の不整形陰影、蜂巣肺、肺野収縮が認められます。一方、珪肺は肺門から末梢へ両側上中肺野に対称的な粒状陰影が認められます。典型例では肺門リンパ節に卵殻状石灰化沈着が認められます。進行例では大塊状陰影(大陰影)が認められます。
心不全
(しんふぜん)
心不全は、心臓が必要な量の血液を体の需要に応じて送り出すポンプ力が不足して引き起こされます。原因としては高血圧性心疾患、心臓弁膜症、心筋梗塞などでの急性循環不全など様々です。胸部エックス線写真では、主に体循環系での循環不全を反映する心陰影の拡大や、肺での循環不全を現す下肺野での線状影、肺紋理増強などの所見が認められます。
大動脈瘤
(だいどうみゃくりゅう)
大動脈弓部や下行大動脈にて部分的に紡錘状や嚢状に突出します。過去には原因として梅毒性が少なくありませんでしたが現在は動脈硬化性が大多数です。致命的な場合が多い大動脈解離との鑑別が問題となります。
中葉症候群
(ちゅうようしょうこうぐん)
両側肺に起きる中葉、舌区症候群の場合もあります。原因は多様ですが、活動性を伴います。浸潤影、気管支拡張像、瘢痕像、無気肺所見などが認められます。
陳旧性胸膜炎
(ちんきゅうせいきゅうまくえん)
過去に炎症を起こした跡形です。胸膜の肥厚や石灰化が認められたり、持続する胸水を伴う場合もあります。肺膿瘍、膿胸、被包化胸水との鑑別が問題になる場合もあります。
陳旧性肺結核
(ちんきゅうせいはいけっかく)
肺結核の中で治療により完治したものや自然治癒例です。瘢痕像、石灰化影、無気肺などが認められます。
陳旧性肺病変
(ちんきゅうせいはいびょうへん)
原因は多様ですが、治療により完治したものや自然治癒例です。瘢痕像、石灰化影、無気肺などが認められます。
転移性肺腫瘍
(てんいせいはいしゅよう)
肺外の臓器由来の悪性腫瘍から遊離した悪性細胞が血液やリンパ液に乗って転移し肺に腫瘍を形成した状態いいます。一般に消化器癌,乳癌,前立腺癌,子宮癌等では単発性が多く,甲状腺癌、肺癌,悪性黒色腫,原発不明では多発性が多い傾向があるとされています。
動脈硬化
(どうみゃくこうか)
加齢とともに動脈内にコレステロールが付着しアテロームが形成されて血管内腔が狭くなります。冠状動脈に動脈硬化が生じると狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が生じ致命的になる場合があります。
肺アスペルギルス症 アスペルギルス属の真菌によって生じた肺の感染症をいいます。
肺炎
(はいえん)
細菌感染などで肺に急性の炎症が生じた状態です。気管支透亮像を伴う浸潤影や、スリガラス影など多彩な陰影を胸部エックス線写真で認めます。
肺化膿症
(はいかのうしょう)
細菌感染などで肺に急性の炎症が生じ肺の組織破壊を起こした状態をいいます。浸潤影の中に空洞や水平面形成などの陰影を胸部エックス線写真で認めます。
肺気腫
(はいきしゅ)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の代表例です。本人の喫煙が原因ですが、受動喫煙による影響も否定できません。確定診断には呼吸機能検査が必要です。初期変化は低線量CT検査でもLAA(低吸収域)の指摘は可能です。進行した典型例は両肺野透過性の亢進、肺血管影の減少、肺の過膨張、両側横隔膜の下降平坦化、中心陰影の幅の狭小化、側面像での胸郭前後径の拡大(樽状)などです。
肺結核
(はいけっかく)
結核菌の肺感染によって肺の炎症を生じた状態をいいます。胸部エックス線写真上、主に上肺に空洞や気管支に沿った小粒状影、不均一な浸潤影を認めます。
肺腫瘍
(はいしゅよう)
肺の組織に発生した腫瘍をいいます。良性か悪性かをCT検査などで診断する必要があります。
肺嚢胞症
(はいのうほうしょう)
肺胞性嚢胞(気腫性嚢胞)、嚢胞性気管支拡張症、ブドウ球菌肺炎感染後性嚢胞、外傷後などあります。多発する嚢胞影を認める事が多いです。
非結核性抗酸菌症
(ひけっかくせいこうさんきんしょう)
結核菌とらい菌を除く非結核性抗酸菌によって生じた感染症をいいます。以前は結核菌によるものを定型的と考えていたので、非定型抗酸菌症ともいわれていました。非結核性肺抗酸菌は土や水などの環境中に存在する菌で、結核菌とは異なり病原性が弱く、人から人への感染はしません。発病の頻度では中高年の女性に多い傾向があります。
びまん性汎細気管支炎
(びまんせいはんさいきかんしえん)
病理的には細気管支炎、細気管支周囲炎を認め、呼吸機能検査では閉塞性障害(高度)を伴います。副鼻腔炎の高率な合併とインフルエンザ、緑膿菌感染も伴いやすい。典型例は両肺の透過性亢進、中下肺の辺縁不明瞭な小粒状影を認めます。高分解能CTでは「カラスの足跡」様の陰影を認める事もあります。
慢性気管支炎
(まんせいきかんしえん)
慢性閉塞性肺疾患の例です。病理的な末梢細気管支の拡張、分泌物過剰、壁肥厚は高分解能CTでは認められます。気管支壁の肥厚像はトラムラインとして胸部X線像でも認められます。
良性肺腫瘍
(りょうせいはいしゅよう)
肺の組織由来の良性の腫瘍をいいます。過誤腫、硬化性血管腫、軟骨腫、脂肪腫、平滑筋腫などがあります。
肋骨腫瘍
(ろっこつしゅよう)
転移性骨腫瘍として脊椎に次いで骨盤・大腿骨などからの発生が高い。乳癌・前立腺癌などからが多い。PET-CTや骨シンチで発見されやすい。多様な像として骨破壊・形成などが認められます。先天性奇形・骨島・硬化像・骨折後変化の場合もあります。