日本人間ドッグ学会

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総合評価・領域別評価

市立伊丹病院

総合評価

 市立伊丹病院は伊丹市が運営する地域の基幹病院で、昭和58年に院内の健康管理室として宿泊ドックが開始された。受診者の多くは市の関係者と近隣市民であり、人間ドック以外の一般健診の受け入れも増加する傾向にある。健診専用エリアには待合室で13名分、宿泊用個室が5部屋用意されており、午前中に18名の受け入れが可能な施設である。
 年間の受診者数は一日ドックが約830人、二日ドックが約240人(継続受診率69.1%)、その他の健診が約1,000人である。本機能評価は今回が初めての受審である。
 施設運営のための基本体制については、健康管理室は院内の一部門として機能しており、情報システムは、院内ネットの活用により情報を共有しており、個人情報は適切に管理されている。また、人間ドック受診者と患者のIDを統一しており、病院のデータを健診や結果説明の時に活用している。
 多くの検査は病院の検査部門で行われているが、十分に連絡を取り合い、病院待合での待ち時間の短縮を図っている。
 健診の質の確保については、当日の医師による結果説明は、一日ドックでは全員に実施されている。二日ドックはすべての判定が出揃ってから、後日改めて来所してもらって結果説明を行っており、実施率は100%である。保健指導は看護師により行われており、99.1%の実施率であり、高く評価できる。
 受診後のフォローアップ体制は今回の受審を機に整備され、精密検査実施率はおおむね80%以上と適切である。追跡検査が必要な受診者については、精密検査と同様の仕組みを整備しているが、受診状況の把握についてはさらなる努力が望まれる。
 総合的な見地から、人間ドック健診施設機能評価認定に値すると判断する。 

領域別評価

1.施設運営のための基本的体制

 理念と基本方針は院内に掲示され、ホームページに掲載されている。施設の運営に関する基本事項は、病院の一部門という位置付けの健康管理室として、適正に運営されている。中長期計画は病院として作成されており、健診独自ではないので、予算書などを健診部門独自の考えで作成することも検討されたい。
 組織図は作成されているが、健診所属の職員も少ないため、委員会への参加は限定的にならざるを得ない。しかし、院内ネットワークによる情報の共有化により、補完されている。料金の収受および会計処理は適切である。
 情報システムは病院と共有であるが、アクセス制限等適切な管理が実施されている。委託業務の選定や見直し、教育等は病院の管理部門で行っており、適切であるが、今後は定期的な評価を期待する。薬剤および診療材料は院内の物流管理システムを活用して、在庫管理を実施している。
 安全衛生管理では、健診部門の医師が委員会に参加しており、職員の健康管理や防災訓練は適切に実施され、法令に基づき適正に届出がされている。感染性等廃棄物の処理では、保管場所は施錠管理され、処理記録も適正に保管されている。
 健保保険組合との関係は適切で、市民公開講座は病院で年10回実施しており、そのうちの1回を健診施設が担当している。

2.受診者の満足と安心

 利便性では、乳がんと子宮がん検診が毎日実施され、マンモグラフィと心電図検査、超音波検査は女性技師が対応している。また、わかりやすい受診案内書や健康調査票が事前に送付されている。
 受付と質問への対応手順はマニュアルが整備され、検査内容や注意点等の説明は、看護師により問診時に行われている。進行状況に応じて、検査順序の変更など柔軟な対応がなされ、受診者の体調不良時の対応手順も明確になっている。
 検査の流れは、健康管理室で採血と採尿、計測、内科診察を行い、院内の2か所のエリア(生理機能検査と放射線等の検査)を経由して健康管理室に戻り、医師の結果説明と保健指導で終了となる。ほとんどの検査は病院の検査部門で行われているが、十分に連絡を取り合って病院待合での待ち時間の短縮を図っている。
 検査室等の担当者名の掲示は一部のみであるが、職員は名札を着用している。受診者の既往歴や治療歴、アレルギーなどの情報は検査担当者で共有されている。
 施設環境については、空調管理は適切で、清掃も行き届いている。待合室にはテレビや雑誌が置かれており、飲み物のサービスもあるが、更衣室に女性受診者のための大型の鏡などの設置が望まれる。
 プライバシーへの配慮については、名前を呼ぶことを希望しない受診者の場合には、受診者と相談して呼び方を決めるとのことである。なお、今回の受審を機に更衣室のロッカーに受診者名が掲示されていた点については迅速に改善対応がなされ評価できる。今後は、尿検体を受診者が持ち歩かないような工夫も検討されるよりよい。指導室や検査室は個室化されており、検査結果等に対する守秘義務の規定が整備されている。
 検査の管理については、各検査は業務マニュアルに沿って適切に実施され、内部および外部精度管理も適切に行われている。検査機器の保守・点検も行われ、検査機器のトラブル発生時の対応手順も明確である。
 業務改善への取り組みについては、投書箱の設置やアンケート調査により受診者の意見と要望の把握に努めており、改善に役立てている。また、人間ドック検討委員会において、継続的に業務改善に取り組んでいる。2015年の訪問調査において指摘した事項に関してはおおむね改善されている。
 セーフティーマネージメントについては、安全管理に関するマニュアルが作成され、事故やインシデントを報告、検討する体制を整備して再発防止に取り組んでいる。受診者の急変時への対応手順も作成されているが、BLS受講の推進や緊急時の対応訓練の実施は今後の課題である。職員の感染防止については、感染防止対策マニュアルが作成され、インフルエンザの他、B型肝炎や麻疹ワクチン等の接種を行うなど、適切な対応がなされている。

3.人間ドック健診の質の確保

 現在の受診実績からは、健診担当職員の数は適正であり、院内各科の専門医や認定医の数も充分である。但し、呼吸器科の専門医が係わっていない点は、画像のダブルチェックの観点からは検討が必要である。
 職員の研修は、病院の実施計画に則って行われている。外部研修は、医師を中心に技術職が積極的に参加している。参加の仕組みは全職員に適用されるが、事務職の研修は少なく、人間ドックに関する研修は、医師のみの参加状況であり、外部研修の在り方の見直しを検討されたい。
 検査項目については、人間ドック学会の基本項目やオプション項目が実施され、定期的な見直しも行われている。画像の判定は、ドック担当医と放射線科医によるダブルチェックが行われ、心電図や眼底写真も適切に判定されている。また、判定基準は、人間ドック学会の判定区分に準拠している。
 当日の医師による結果説明は、一日ドックの全受診者に対しては10~20分かけて必須項目と生理機能検査、胸部X線検査、腹部超音波検査について説明されている。一方、二日ドックに関しては、すべての検査結果が判明してから来院してもらって結果説明を行っており、実施率は100%である。保健指導は看護師により行われており、99.1%の実施率で高く評価できる。必要時には管理栄養士による栄養指導が行われているが、運動指導は行われておらず、今後の課題である。
 精密検査が必要な受診者のフォローアップ体制は1年前に整備され、結果報告書送付時に紹介状と返信用封筒を同封している。6カ月経過しても返信がない場合には、受診勧奨の書面を送付しており、精密検査実施率はおおむね80%以上である。追跡検査が必要な受診者についても、精密検査と同様の仕組みを整備しているが、受診状況の把握についてはさらなる努力が望まれる。
 健診の精度や有用性の検討については、健診結果の検討が定期的に行われており、人間ドック学会の調査にも協力している。人間ドック学会での発表も行われているが、今後、さらなる取り組みを期待したい。

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