日本人間ドッグ学会

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総合評価・領域別評価

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総合評価

 医療法人社団井口会 落合病院は岡山県真庭市にある総合病院で、昭和48年に病院の健康管理部として健診施設を開設した。「見直しませんか?あなたの健康」をキャッチフレーズとして、地域住民や受診者のニーズに合わせて、人間ドックをはじめとした健診業務全般を提供している。
 年間の受診者数は一日ドックが約640人(継続受診率80.4%)で、その他健診が約2,700人である。本機能評価は平成19年に初回認定を受け、2回目の更新審査である。
 「施設運営のための基本体制」では、前回受審以降の病院全体の取組みは中長期計画の中で展開されており、真庭市の少子高齢化の現状を課題として、地域包括ケア病棟の開設や近隣病院との連携強化などを推し進め、健診と医療、福祉、在宅などを一環とする活動を継続している。とくに、健診分野においては、「保健予防活動の推進」を掲げて、真庭市と共同で中学生を対象にしたピロリ菌検査を行うなど将来のがん予防にも力を注いでいる。
 「受診者の満足と安心」では、多くの検査が病院内の検査室で実施されているため、受診者の動線が長いことが課題である。この対策として、以前より受診者一人に対して一名のスタッフが付き添っている。また、受診者満足度を高めるためにアンケート調査が実施され、食物アレルギーの表示の記載や季節ごとにドック検査着を替えるなどの工夫がなされている。
 「健診の質の確保」では、当日ほぼすべての受診者に対して医師による結果説明と、保健師と看護師による保健指導が実施されている。前回からの課題であった受診後のフォローアップが改善の途上である。精密検査の受診状況を把握し、受診勧奨を強化するなど積極的な活動が見受けられるものの、一部の検査の実施率はまだ低率である。また、追跡検査が必要な受診者へのフォローでは、未受診者への受診勧奨を3か月後に実施するように改善しているが、実施率は低率である。しかしながら、これらの課題に対して積極的に取組む姿勢がみられ、今後の更なる改善に期待する。
 また精密検査や治療の結果から健診の有用性に繋げる取組みや関連学会での論文発表などにも、より積極的な活動が望まれる。
 総合的見地から、人間ドック健診施設機能評価の認定(更新)に値すると判断する。 

領域別評価

1.施設運営のための基本的体制

 健康管理部の理念と基本方針、受診者の権利及び運営規程等は独自に策定され、見直しも行われており適切である。就業規則や倫理規程、組織内規等は、病院のものが適用されており、文書管理規定の整備をするとなおよい。職業倫理に反する行為に対しては、相談の窓口があるが利害関係のない第三者窓口の設置を検討されるとなおよい。
 中長期計画に連動した病院の目標の下、職員総会や健康管理部運営委員会にて年次計画が策定されている。目標達成に向けて個人目標が展開され、上司評価がなされている。今後、部署の目標達成度を評価し、次年度に反映される仕組みがあるとなおよい。
 組織図は健康管理部として作成し、見直しがなされている。現状では健康管理部は事務部門の中に位置づけられているが、実態と乖離していないか、今後の見直しの際に検討されることを期待したい。会議体系は明確で、健康管理部運営委員会が毎月開催されている。料金の収受は健康管理部で行い、病院の経理担当者が会計処理し、経理会議で月次報告を行っている。
 個人情報に関する手順はマニュアルなどで決められており、トラブル時の対応についても明示され適切であるが、情報セキュリティ対策として、定期的なパスワードの変更方法については見直しが望まれる。
 委託業務は選定基準に則って業者が選定され、職員に対する教育については計画的に実施されている。今後は契約後の再評価の仕組みについても病院全体として明確にすることを期待したい。薬剤および診療材料の在庫管理は担当部署が明確で、有効期限の確認や棚卸しも適切である。
 安全管理については病院に委員会が設置され活動しているが、産業医の出席がほとんど見られず、より積極的な関与を期待する。職員の健康診断や防災訓練、感染性廃棄物等の処理は適切である。
 企業健保組合との契約は適切で、データのフィードバックや地域住民への健康に関する情報の提供は適切である。

2.受診者の満足と安心

 利便性では、土曜日の午前中も健診を実施しており、乳がん検診希望者に対しては年に一度であるが日曜日も受け入れている。またマンモグラフィーや乳腺エコーは女性技師により実施され、安心感が得られている。
 健診の流れでは、多くの検査が病院内で実施されているため、健診施設からの動線が長いこと、時間がかかることが以前からの課題である。受診者一人に対してPHSを持ったスタッフ一名を配置して、待ち時間を少なくし、外来患者との接触を減らす工夫をしている。担当者は病院の各検査ブースにも明示されており、受診歴のある受診者のアレルギー歴などは事前に把握し、共有されている。
 院内の空調は集中管理されているが、さらにガウンやひざ掛けを準備し、微調整を図っている。また季節ごとに健診衣を替えるといった工夫も評価したい。検査後の食事は病院内の食堂に、受診者専用のスペースが確保され、提供時間も受診者それぞれに対応している。またメニューには以前から要望のあったアレルギー表示が追加された。
 プライバシーに関しては、名前で呼び出しを希望しない受診者には番号で呼ぶ仕組みがある。検査は個別に仕切られたスペースで行われているが、音漏れがしない完全な個室でない場所もある。前回の指摘事項であった尿検体については、検体の置き方を工夫している。
 検体検査に対する内部および外部精度管理は適切で、良好な結果が得られている。検査の機器の管理体制は適切であり、トラブル発生時の対応も確立している。
 受診者の声は、病院内の意見箱や年に3か月間行われるアンケート調査などで吸い上げ、業務改善に取り組んでいる。前回受審時に指摘された情報システムのセキュリティと検体の置き方等は改善されており、今後は精検の受診率や追跡調査などのフォローアップの充実と健診の有用性についての発表に期待したい。
 セーフティーマネージメントでは、インシデントを報告する仕組みがあり、職員に報告されている。それとは別に健康管理部ではミーティング等で確認し、再発防止に努めている。急変時の対応も確立されている。院内感染対策は適切に実行され、職員に対する感染症の抗体検査が充実しており、各種のワクチン接種も提供され、インフルエンザワクチン接種はほぼ100%である。

3.人間ドック健診の質の確保

 人間ドック認定医のほか各診療科の専門認定医が配置されており、医療職の体制でも人間ドックアドバイザーの資格を持つ保健師が配置されるなど適切である。職員教育では、必須研修と専門研修が計画的に実施されている。院外の学術講演会などの情報が院内LANで案内されており、また研修の不参加者へのフォローも確実に行われている。
 検査の項目は人間ドック学会が提示する項目を満たし、任意検査についても定期的な見直しが行われている。検査結果は医師によるダブルチェックが行われ、検査結果の判定基準はドック学会に準拠している。
 当日の医師による結果説明は、健診システムと個人ファイルを用いて過去の健診結果や画像を参照して行われ、ほぼ全員に実施している。保健指導については、保健師と看護師、管理栄養士の連携のもと全員に実施されており、指導記録の内容は個別性が高く充実している。診察介助に同席する看護師は、診察・結果説明後に受診者と共に隣の診察室へ移動し、パンフレットを活用しながら生活指導を行っている。
 受診後のフォローアップでは、精密検査や治療が必要な受診者に対しての受診の相談と予約を行う体制が構築されている。一方、上部消化管Ⅹ線の指示率が高く、一部の項目において受診率が低い。また、追跡検査が必要な受診者へのフォローでは、これまで行っていなかった未受診者への受診勧奨を3か月後に実施するように改善しているが、血圧に関しては1年後の再検査指示のみであり、全体の受診率も低い。これらの点について今後の課題として捉え、積極的に改善に取り組む姿勢がみられるため、今後はフォローアップの体制整備、全体の受診率向上に向けた更なる取組みを望む。
 健診の有用性についての取り組みは前回の指摘事項でもあるが、人間ドック学会等の調査研究や学術大会に参加しており、今後は学会発表や論文発表など更なる充実に期待したい。

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